「そーだよ」
ほら、だからもうそういうのはいいよ。
「本当はネチネチしててうざくて、声がデカくて女子力のかけらもなくて、いびきがうるさいバカだって、知ったら多分幻滅するだろ」
「……っ、」
鼻の奥が痛い。
なんでこんなすぐに泣きそうになるのよ。
こんな奴に、こういうこと言われるのは慣れてるはずなのに。
数週間話さないだけで感覚忘れちゃうもの?
「本当はすげぇ傷つきやすくて、誰もみてないところで泣き虫で、強がりで嘘がつけないやつだって…」
「……芽郁?」
「俺だけでいいのに…」
目をそらした彼の顔を見つめる。
「そういうの、ユズのそういうところ知ってるのは、俺だけでいいのに…」
なんで、芽郁が泣くのよ。
泣きたいのはこっちなのに。
「泣き虫なのは芽郁で────っ?!」
っ!!
言い返そうと声を出した瞬間。
私の体は、芽郁の温もりに包まれた。



