キミが可愛いわけがない



「ユズちゃんが記念パーティー参加するの、知らなかったの?」


「……」


いや、知っていた。
ユズのお母さんから聞いたから。


でも、いざ当日になると、やっぱりもともと持ってる性格上、なかなか踏み出す勇気が出なくて、考え混んでる間に結局寝てしまったってわけだ。


「知ってた…けど…」


「やっぱりね。ユズちゃんが一人で出席するわけがないことも知ってるわよね?」


「…まぁ」


「あー!ほんとムカつくー!私が迎えに来なかったらどうなってたことか!」


「もう若松は俺に関わらないんだと思ってた」


「はぁ?別に1つも楠木くんのためじゃないって。ほんとヘタレな男ってめんどくさい」


「うっ、ごめん」


はっきりヘタレと言われると、もう何も言えない。本当にそうだから。


「ユズちゃんがなにやらめっちゃイケメン連れて来ちゃって、みんなびっくりしてんの。ユズちゃんもすっごい可愛くなっちゃって…相手の人、私も誰だかわかんなくてすごいびっくりして…」


「有馬じゃねぇーの?」


「なわけないでしょ。もしそうなら、今頃2人の間に入って仲ぶち壊すし、こんなところ来てない」


「あ、ですよね」


すっげぇピリピリしている若松には、もうこれ以上なにも聞けない。


俺は黙って、彼女の後ろを歩くことにした。