キミが可愛いわけがない

(side 芽郁)


♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜


ん?


大きな音のメロディに起こされて、俺はベッドをもぞもぞ動きながら、携帯を手に取った。


───ピッ


「はい…」


『楠木くんっ!!今どこにいるの!!』


ん?


久しぶりに聞いたその声は、


「若松?」


『はぁ…』


寝ぼけた声で、画面の向こう側にいる人の名前を呼ぶと、彼女は大きなため息をついた。


『今、楠木くんの家の前にいます』


「はぁ?」


驚きのあまり、かぶっていた布団をカバッとどけて体を起こす。


『早く降りてきて。緊急事態』


「あ、はぁ…」


突き放されてからまともに話していなかったから、どうやって接していいのかわからなかったけど、若松は意外と普通だ。


それにちょっとだけホッとした。


『あ、制服でね』


「え、なんで…」


『急いで。時間ないの』


疑問だらけだったけど、俺は若松の言うことを聞いて制服に着替えた。