『…芽郁は、咲菜のことが好きなんでしょ』
そういえば、ユズは最後に俺にそんなことを言った。
そんなことあるわけないのに。
『私は咲菜の代わりにはなれない』
そうだ。
キスをしただけでは、彼女に何も伝わっていなかった。
ユズの変な誤解に腹が立って、思ってもない言葉を吐いて部屋を出て行ったのは俺で。
そうだよ。
今までユズに好きのそぶりの1つや2つも見せてこなかった俺の気持ちを、キス1つでわかってくれるわけがない。
「俺、ユズに気持ち伝えてない」
「うん」
でも───────。
もう遅いかもしれない。
有馬だけじゃなく、ほかの男子とも一緒にいるのをこの間見た。
ずっと前に俺に見せてくれていた笑顔を振りまいていたのを見た。
「だけど、もう遅いかもしれない」
謝ったって、本当のことを言ったって、そもそもユズは俺のことをもう嫌いかもしれない。