やっとわかった。

そういうことか。

ユズにとって、俺と若松が一緒にいたことなんてこの際どうでもよかったんだ。

だってほら、今すげぇ楽しそうじゃん。


ずっと避けていたはずの、男の子と。


俺のことは必要以上に避けていたくせに。


有馬のことだって…そこにいる男のことだって。


「柚希でいいよ」


「え、でも…」


「早くー」


「…ゆ、柚希先輩っ」


「うんっ、よくできましたっ!」


その笑顔は、俺だけのものだったのに。
中学の頃、ユズがハブられたとき、内心ホッとしている自分がいたんだ。
一人ぼっちになったユズにはもう俺しかいないって。
ユズは俺の元からは離れられないって、油断していた。


気が付いたら、こんなにも距離が離れてしまっていたなんて。


もともと、ユズは仕方なく俺といてくれたのかもしれない。

家が近いから、親に頼まれるから、昔から仕方なく。


キスをあんなに怒るくらいだ。


なんであんなに自惚れていたんだろうか。


好かれているなんて、奇跡じゃんか。

同じ時間を過ごしただけなのに。

家が近いだけなのに。


なんでこれからもこの先もずっと俺のそばにはユズはいてくれる、なんて思いやがっていたんだろう。


結局、ユズ以外の人まで傷つけてしまった。


そうだ。
最低なことを言った。


俺がキスしたことにユズは怒ったのに。
若松が近くにいるせい、なんて。
若松は俺とユズのことを考えてくれていたのに。