(side 芽郁)


「えっ?!喧嘩した?!」

「ちょ、声大きいって」


校舎の外階段の下で若松が大きな声を出したので慌てて止める。

ユズ様子がおかしいと感じた若松は、すぐ俺をこんなところに呼び出した。


まぁ、原因が俺なのは確かだけど…。


「若松のことやっぱりずっと疑ってんだよ。」


「はい?私のせいだって言いたいの?って言うか、私との関係怪しんでそれでユズちゃんが怒ってるなら、ユズちゃんもしかして楠木くんのこと…」


「キスしたんだ…」


「…、」


自分で言いながら恥ずかしくなって、俺は口元を手で隠す。


付き合ってもいない女にキスするなんて、そりゃ気持ち悪がられても仕方ないし…。


「寝込んでるユズに…つい、その…起きていないと思って、キスした。すげぇバカなことしたのはわかって──────」


「できんじゃんっ!」


「えっ」


突然声を荒げた若松に俺はポカンとなる。