「芽郁ってさー…」
ユズは体制を戻して俺に背中を向けてから、俺の名前を呼んだ。
大嫌いなこの名前も、ユズに呼ばれるのだけは嫌じゃなかった。
むしろ、彼女が俺の名前を呼んでくれるたびに、1人じゃないんだって再確認できて…。
「何」
「…私のこと好きなの?」
「………」
あり得ない。
心の中で即答できたその質問に、
声が思うように出ない。
「…芽郁?」
「アッホじゃねーーの?今日ちょっと後輩からチヤホヤされたからって調子のんじゃねーよ」
「あぁ?!わかってるよ!かよたちが変なこというから一応確認しただけ!わかってっし!」
ユズがバンッとベッドを思い切り叩く。
「俺は完璧主義者なの。わかる?勉強も運動も完璧にこなすんだから、好きになるやつだって完璧じゃないと無理」
「だから別にそこまで聞いてない。もうしゃべんないで」
ユズは怒ってまた背中を向けた。
怒らせることはわかってるのに、俺は止まらない。



