白王子と黒猫


私は結局、熱(知恵熱)により家に帰ることになった。ボールを当ててきた子は必死に謝ってくる。非はないのが事実だから気にしないでほしい。私は彼女になんとか気持ちを伝えて落ち着いてもらった。結局お互いに謝ることになっていた。そこまで話したことはないがお互いに距離が縮まった気がして嬉しかった。

「熱があるなら今度からは早めにいうように。」
「…はい。」
( 知恵熱が起きたのは白が原因なんだけど)私達は一緒にタクシーを降りる。私の隣にいる白は私に付き添って帰ることにしたらしい。荷物も持ってくれる。そして今、タクシーから降りた瞬間怒られていた。白は家のドアを開けて私に入るように促す。

(にしても、いつもどうりだな。)

あまりにも普通に接してくる。

(……もしかして。私の気のせいだったのだろうか。)

私は白をみる。白は玄関に荷物を置くと私の方へふりかえる。
「ほら、病人は早く寝ないと。おいで。」
二階に上がるのが面倒いから一階のソファに行こうとしていた私の考えがわかったのだろうか。さすがは幼なじみだ。

(でも、流石に恥ずかしいし。)

「…ん。いいよ。歩ける。」
けれど白は問答無用で私をお姫様抱っこしてくれる。

(あ、白の匂いだ。)

白の匂いは不思議だ。同じ洗剤を使っているはずなのに別のもののようなのだ。

(…細い腕なのに、力があるんだな…。)

白の腕は私の体重にもびくともしない。軽やかな足取りだ。

(…いや、貧相な体してるからかな。)

私は心の中でため息をついた。どうしても思考は行き着くところに行き着いてしまう。目を少しあける。彼の顔は前をしっかりみている。

(どのくらいかな。こんなに近くで見るのは…。)

私と白が幼なじみだとはいってもずっとではない。幼稚園の頃は彼は隣に住んでいた。家庭の事情で彼は小学生低学年になった頃にに引っ越していった。私は何度もお母さんに泣きついたのを覚えている。小学校中学年の頃に偶然にも街中で一回あった。見たことのない女の人がいた。私は白の元に駆け寄り、その女性をを敵視したらしい。のちに彼の新しい母親だと知ったが。幼心にも彼女に白を奪われるとでも思ったのだろう。しかし、彼と会ったのはその一回きりだった。次に会ったのは彼の親が海外に行くことになったからと私の家で同居することになった頃だ。中学二年生の秋ぐらいだった。私は喜んだ。私は今まで会えなかった分思いっきり遊んだ。白は私と一緒になってはしゃいだ。幼稚園の頃は私の方が身長は高かったのにその頃にはすでに抜かれていた。それ以来私と彼は家族同然にくらしている。

「着いたよ。」
彼は片手で部屋のドアを開けた。そして私をベットにかける。
「大丈夫?着替えるの手伝おうか?」
「…ん。平気。このまま寝る…」
頭がくらくらする。私はベットで力なく倒れる。
「それは駄目。皺になるよ。」
「…んー。じゃあ、白が脱がしてくれればいいんじゃないかな?」
私はもう投げやりになっていた。
「………………は?」
間の空いた声が聞こえる。
「パジャマはあっちー。」
「いやいやいや。待って、猫。僕も男だから、さすがにそれはできないから!」
相当焦ってるのだろう…。かなり動揺してるみたいだ。
「…んー。白は幼なじみだし…。」
私はもはや夢の世界に誘われるのではないかというぐらいになっていた。
「…猫。もっと自覚しろよ。」
服のボタンが外れていく。ファスナーが開いて胸のあたりが涼しくなる。

(……ん?胸?)

私の意識は浮上し始める。そういえば服を着替させてもらうということはつまり下着をみられるということ。それは私の胸が見られるのも同義なわけで…。

「キャーッ!!」
「うわっ!!」
私は白をベットから突き落とした。白は頭を抑えていた。
「白!ごめんなさいー!私が全部悪いんだけど!前の言葉訂正!自分でします!!」
白は私の必死の懇願を聞き入れてくれた。彼は立ち上がりさっき持ってきてほしいと頼んだパジャマを渡してくれる。
「しっかり寝ててね。お昼は何か食べれそう?」
「………。雑炊食べたい。」
「了解。」
彼は笑顔で返して部屋を去った。私はベットの上で着替えを始める。

(びっくりしたー。というか、熱ある時は思考回路が狂いやすいのね。)

私は服を着替え終わる。制服は投げっぱなしにしといた。今は早く寝たいのだ。私は布団の中にこもり重い瞼をゆっくりと閉じた。