わたし、結婚するんですか?

 なんだろうな、これ。

 パラレルワールド?

 そんな莫迦な……と思いながら仕事をしていると、同期の葉山優(はやま すぐる)がやってきた。

 ランニングが趣味とかいう元大学の駅伝選手な彼は、一年中日焼けしていて、精悍な感じだ。

 まあ、中身までもかは知らないが、と思っていると、にこやかに隣のおばさまと話した彼は洸の横に立ち、
「津田。
 社員証なくした」
とあっけらかんと言ってくる。

「……なくさないで」
と洸が言うと、

「いや、でも、社内なのは確かなんだよなー。

 人事に届いてないか?
 社員証は人事の管轄だろ?

 トイレか何処かで外した気がするんだが」
と葉山は言う。

「何処のトイレ?
 行ってみたの?」

 三階、すぐに行ったがなかった、と言う。

「わかった。
 届いたら、すぐに知らせるわ。

 葉山の社員証なんて持ってたって、なんにもいいことないもんね」