わたし、結婚するんですか?

 




 他の部署に残業するなと言っている手前、人事は忙しくても、極力、定時付近で仕事を終わるようにしている。

 なので、遥久より早くに仕事を終えた洸は、ひとり、電車に揺られ、海の近くまで行ってみた。

 問題の結婚式場、イグレシアに行くためだ。

 車窓から、緑溢れる山の斜面を眺めていると、突然、それが途切れ、輝く海と、夕陽に映える白亜の神殿が現れた。

 綺麗だな、と洸はそれを眺める。

 雲の切れ間から光が降り注いでいるその神殿を見ていると、そこだけ、せわしない日常から切り離されているかのように思えた。

 中で働く人たちに聞いたら、いやいや、そんなことはない、と言われるのだろうが。

 それにしても、私がこの結婚式場を気に入っていたというのなら、なんで、式場の存在自体、忘れてたんだろうな。

 そんなことを考えながら、洸は、次の駅で降りた。