わたし、結婚するんですか?

 




 翌朝、遥久が総務から廊下に出ると、前に洸の後ろ姿が見えた。

 お、洸だ。

 後ろから見れば、素敵なお姉さん、と言った感じだが。

 口を開くと、あれだからな……。

 葉山は、洸の何処がいいんだろうな?

 そんなことを思いながら眺めていると、洸はいきなりスカートのポケットからスマホを取り出した。

 画面を見て、にまにま笑う。

 ……不気味なやつめ、と思いながら、遥久は、すうっと横に行った。

「おはよう」
と挨拶しながら、その画面を見下ろす。

 洸はビクッとして見上げたあとで、相手が自分だと確認して、更に、ビクッとしていた。

 そのビクつき方が、ハムスターが大きな音に驚いたときの様子と似ていて、ちょっと笑いそうになる。

 画面に映っていたのは、キャットタワーのてっぺんで、気持ちよさそうに目を閉じているチャトランだった。

 ふーん、と思いながら、遥久は通り過ぎる。