わたし、結婚するんですか?

「猫は家に着くというからな。
 移動させたら、嫌がるかもしれん」
と渋い顔をするので、

「何処に移動するんですか?」
と訊くと、

「結婚したら、此処も手狭になるから、家を建てると言ったじゃないか」
と言ったあとで、

「……それも覚えてないんだな」
と顔をしかめる。

「まったく、なんで俺のことだけ……」
と呟いたとき、本気で機嫌が悪いように見えて、やっぱり、この人の言うことは、本当なのかな? と思ってしまった。

 だったら、すごい悪いことをしているような、とちょっと落ち込みかけたとき、遥久が、

「まあいい。
 おやすみ」
と言って、キスして来ようとした。

 思わず、ドアに張り着くように逃げてしまう。

 飛んで逃げた洸を見下ろし、遥久は脅すように、
「……おい。
 そこからか」
と言ってくる。

 ドアに押し付けられる形になった洸は、遥久の後ろにある廊下の明かりのせいで、彼の影にすっぽりと入ってしまい、なんだかそこから逃げられない感じがして、慌てる。