「なにをしている。
　早く開けろと言っただろう」

　そう言いながら、遥久は鞄から鍵を取り出し、洸のマンションのドアを開けた。

「えっ？
　課長っ、なんでうちの鍵を持ってるんですかっ」

　遥久はその鍵を手にしたまま、こちらを見下ろし、言ってくる。

「……ストーカーを見るような目で見るな。
　お前がくれたのに決まってるだろう」

　そ、そうなんですか？

　まったく身に覚えがないのですが……。

　まさしく、狐につままられたような気分だ、と思いながら、意識を取り戻してからずっと思っていたことを口してみた。

「じ、実は、此処はパラレルワールドだとか……」

　だが、
「お前は莫迦か。
　知っていたが」
と一蹴されてしまう。

　っていうか、莫迦だと思っているのなら、私と結婚しなくても、よくないですか？　といじけながら、部屋の主のはずなのに、遥久の後について入る。

　すると、たたたたたっと軽い足音がした。