わたし、結婚するんですか?

「俺のものだと公表して、他の男を近づけさせないようにするか。

 いやいや。
 焦った阿呆な男がお前に手を出そうとするかもしれん。

 あと、部署が近すぎるのも心配だ。

 結婚したら、少し部署を離されるかもしれん。

 廊下でばったりお前に出会って、今日もいい一日だったと思えなくなる。

 家に帰ったら居るんだろうが。

 会社でもお前の顔が見たいからな」

 そんなことを延々と言ってくる遥久に、

 ……なんか、お母さんの言う通り、ストーカー寸前な気がしてきましたよ、と洸は思っていた。

 でも、愛があるせいか。

 今は、全然、それが嫌ではなかった。

 しっかりと自分の手をつかんでいる遥久の手の温かさとその大きさを感じながら、このまま何処までも歩いていきたいな、と思ったが。

 それが記憶を失った洸の、最後の幸せな夜だった――。