ずいぶん酒も進んだので、男二人はトイレに行っていた。
遥久が手を洗っていると、章浩が話しかけてくる。
「……なんで今日、俺が此処に来たと思う?」
俺に言いたいことがあるからだろう、と遥久は思っていた。
可愛い従妹の洸の結婚相手について、この男が調べないはずはない。
章浩は自分ではなく、鏡の方を見て呟くように言ってきた。
「俺はなにも言わない。
今、洸が幸せそうだからだ」
鏡の中の自分を見て言うその姿は、おのれを自制しようと暗示をかけているようにも見えた。
「洸を幸せにしろよ」
ようやくこちらを振り向き、章浩は言ってきた。
「あんたに言われるまでもないな」
とつい、素っ気なく言ってしまい、章浩に、
「だから、社外でも俺は社長だからなっ。
他の奴らにこんなとこ見られたらどうするんだっ」
と怒鳴られる。



