チャトランの背を撫でていた洸は、遥久の顔を見上げ、訊いてみる。

「……課長。
 何故、私の記憶は飛んだんでしょうか」

 遥久は無言で洸の髪を撫でた。

 表情は変わらなかったが、その瞳の色を見ていた洸は、やはり、なにかあるようだ、と感じた。

 なにが。

 一体、課長にはどんな秘密が。

 なにも触れずに居る方がいいのかもしれないけど。

 こんなに好きなのに、なんだかわからない、わだかまりがあるままなんて嫌だ。

 心の底からそう思った洸は、思い切って、遥久に訊いてみることにした。

「課長」
と呼びかける。

 その重々しい呼びかけにか、遥久が口許を引き締めた。

「あの――

 黒幕は誰なんですか?」

 沈黙があった。

「……なんのだ」

 さっきのドラマのか? と帰ったばかりのときに、見もしないのにつけていたテレビを指差される。

 刑事物のドラマをやっていたのだ。