今、行きたくないような、行きたいような……。
章浩のところを出たあとは、真面目に仕事をしていた洸だが、ちょうど総務に行く用事が出来てしまった。
というか、隣りだし、普段はなにも気にせず、頻繁に行き来しているのだが。
軽く礼をし、小声で失礼します、と言って入ると、郵便受けに郵便物を入れて去る。
その間に、ちらと誰かと話している遥久を見たが、彼がこちらを見るような様子はなかった。
……普通、彼女が来たら、ちらとでも見ませんかね?
本当に付き合っていたのだろうかな、私たち、と思いながら、そのまま、給湯室へと行ってみた。
そこを片付けるフリをして、少し頭を整理したかったからだ。
だが、すぐに、
「おい」
と声がした。
振り返ると、遥久が立っていた。
「水をくれないか」
と大きな錠剤を手に言ってくる。
「は、はい」
と水を渡したが、遥久はそれを飲むことはしなかった。



