わたし、結婚するんですか?

 






 遥久は自宅に行くと言っていたのに、洸の家に帰り、チャトランに膝に乗られたら、帰る気を失ったらしく、ソファに寝転がって洸の部屋の本を読みながら、今度は背中にチャトランを乗せていた。

 結婚したら、こういうのが毎日の光景になるのかな、と微笑ましくそれを見ていると、スマホが鳴る。

 母親からだった。

『今日はどうもありがとう。
 遥久さんにもよろしく伝えておいて』
と言われ、……私もまだ、遥久さんって呼んでないんだが、と思ったが。

 母親が、まあ、課長さん、とか婿に対して呼びかけるのも変だしな、と思ったとき、

『顔も勤め先も及第点。
 でも――』

 油断ならない男ね、と母は言った。

『じゃあ、明日ね。
 明日はなにを着ようかしら。

 佐野さんに会うのが楽しみね』
と含み笑いをする。

 えーと。
 これって、佐野さんに会いに行くってイベントでしたっけ? と思ったのだが、母はいつものように、言いたいだけ言って、切っていた。