「それじゃ、明日ね。
二日も私に付き合わせて悪いわね」
店を出たあと、タクシーでホテルに帰るという母親がそう言ってきた。
いや、おかーさん。
自宅には帰らないのですか、と思っている洸の横で遥久が、
「いえ。
お母さんも一緒に式場に行っていただけるのは嬉しいです。
我々では気づかないこともあるでしょうし」
と如才なく言っている。
なんか仕事相手と話してるみたいな堅さがあるな、と思っているうちに、タクシーはすぐに来て、エリカは帰っていった。
「どうする?
今日はうちに来るか?」
と遥久が訊いてくるので、
「今日はって、昨日も課長のおうちでしたよ」
と言うと、
「うん、いや。
昨日、家の中にお前が居るのも悪くないと思ってな。
既にお前があの家の風景と化しているというか」
と言ってくる。



