わたし、結婚するんですか?

 いやー、ヘタレのところは否定してーと思っていると、エリカは先に立って、店の入り口へと続く赤い階段を上がりながら、

「章浩はね。
 私に、エリカさん、僕が息子になったら、いいと思いませんか? とか言ってきたのよ。

 なにその遠回しな発言、と思って。

 自分で言わないような男、知らないわよ。

 幾ら可愛い甥でも、そんな覚悟もないようじゃね」

 前を歩く遥久が、ほら見ろ、という顔をして、振り返る。

 ……いや、初耳だ。

 まあ、この二人からすれば、私が初耳なところが問題なのだろうが。

 しかし、上海から帰ってきたのに、何故、中華と思っていると、エリカは、
「此処のが美味しいのよ。
 上海に居るときもずっと、この店の中華が食べたいって思ってたのよ」
と言って、近くに居た店員に微笑みかけている。

 店員も嬉しそうに、ありがとうございます、と言っていた。

「ところで、式はいつ?
 何処でするの?」
とエリカが訊いてくる。