「あら、章浩は来ないの?」
何故か中華料理屋で待ち合わせた母親が店の前で、そう言ってきた。
どうやら、章浩にもよかったら一緒にどうかと声をかけていたようだった。
「さっき、会社で会ったけど、お母さんに会うって言っても、そうかって言っただけだったよ」
と洸は答えた。
それにしても、相変わらず、派手な人だな、と思う。
服装も化粧も奇抜なわけでもなんでもないのに、なんとなく派手だと感じてしまうのは、その顔立ちのせいか、雰囲気のせいか。
今も通りを行く人たちが振り返っている。
母、エリカは遥久を見て、
「まあ、章浩はヘタレだからね」
と言って、二人で笑っている。
「初めまして、悠木さん。
章浩と似て、ヘタレな娘ですが。
よろしくお願いしますね」
と言う母親に、遥久は少し笑って、
「はい」
と言う。



