わたし、結婚するんですか?

 




 目を開けると、そこは、ソファの上じゃなくて、寝室で。

 小さく調節された部屋の明かりの中、遥久が真顔で自分を見ていた。

 なにを考えていたのかな、とちょっと不安になりながら、その顔を見ると、
「お前、さっきから鞄の中でスマホが鳴ってたぞ」
と遥久は言ってくる。

「えっ、そうですか?」
と起き上がったが、服がこちらになかったので、どうしようかな、と思っていると、遥久が、

「いい。
 俺が取ってきてやる」
と言って、鞄と服を持ってきてくれた。

「あ、ありがとうございます」
ととりあえず、スマホを見ると、母親から着信していた。

 しまった。
 気づかなかった。

 この人の電話に出ないとうるさいんだよなあ、と思いながら、
「母親です。
 ちょっとかけますね」
と言って、発信する。

 一時間、こちらの方が早いはずだから、まだかけても大丈夫だろう、と時計を見ながら。

『はい』
と出た母親は、仕事をしながら、電話を受けたようで、微かに鉛筆が紙にこすれる音がしていた。

「ごめん。寝てた」
と言うと、母親は、

『誰と?』
と訊いてくる。