わたし、結婚するんですか?

 あの、課長。
 全然、褒められてる感じがしないのですが……とまだ正座したまま思っていると、遥久は、肘掛けに頬杖をつき、カーテンが開いたままの窓の外を見ながら言ってきた。

「……お前には悪いと思ってるんだ」

 その重々しい口調に、どきりとし、洸は身構える。

「いつもお前の家ばかり行って」

 そんな殊勝なことを言い出すので、どうしたんですか? と思っていると、

「いや……人が帰ったあとって、寂しいだろ? 特に一人暮らしだと。

 お前が此処へ来て、居なくなったあとに、一人になるのは嫌だな、と思ってたんだ。

 もしかしたら、お前が同じ思いをしてるかもしれないのにな」
と言ってくる。

「……そんなこと気にしてたんですか?」

 可愛いところあるな、と思いながら、
「大丈夫ですよ」
と洸は微笑む。

「課長が居なくなっても、私は平気ですからっ」
とフォローのつもりで言ったのだが、遥久の顔面は固まっていた。