わたし、結婚するんですか?

 





 遥久の部屋は本当にチリ一つ落ちていないような部屋だった。

 そもそも物があまり出てないし。

 自分の部屋には置くのをためらうような、真っ白なソファに腰を下ろし、遥久は、
「な? 見て後悔したろ」
と言ってくる。

 ……確かに、美しい部屋だ。

 白いソファにはシミのひとつもなく、側に置かれた観葉植物の手入れも素晴らしい。

 そして、恐ろしいことに、そのソファは布張りだった。

 拭けばどうにかなるものなら、まだよかったのに。

 私だったら、すぐに紅茶とかこぼしてしまいそうだ、と洸が思っていると、遥久は、
「これは新居に持っていこうかと思ってるんだが」
と言ってくる。

「あの、結婚やめてもいいですか……?」
と思わず、言ってしまった。

 遥久のお気に入りらしいそのソファを汚してしまったら、どんな惨劇が起きることやら、と思ってしまったのだ。