なので、訊いてみた。

「すみません。
 新郎の名前は誰になっていますか?」

 えっ、と張り切っていたはずの入江の言葉がつまってしまう。

「あ、いえ。
 漢字間違えてたかなあ、と思って」
と誤摩化すと、

「あっ、そうですかっ。
 少々お待ちくださいっ」
と言ったあとで、何度か資料をめくっていたようだ。

 佐野さん、と聞こえた。

 側に居るさっきの男の人に確認しているらしい。

 そのあとで、言ってきた。

「あ……えーと。

 申し訳ございません。
 新郎の方のお名前はまだ伺ってなかったようなんですけど」

「そ、そうなんですか」
と言うと、向こうも焦ったように言ってくる。

「あっ、でも、式場だけ、とりあえず押さえられる方もいらっしゃいますから。
 お見合いされる方とか、どうしてもうちで式を挙げられたい方とか」

 触れてはまずいところに触れてしまったのかな、と思ったようだった。