わたし、結婚するんですか?

 ドアを開けかけたまま、上から下まで洸を見、
「お前は、ぱっと見だけなら、男が、おっ、と思う感じなんだが。

 あの人は、お前に対して、隙あらば、という感じでもないから。

 誰かよっぽど好きな人でも居るんだろうと思ったまでだ」
と言ってきた。

「あのー、何度も言ってますけど。
 私、特にモテたことはないですからね……?」

 この人、意外に自分の彼女がこの世で一番可愛いと思うタイプなのか? と思いながら、遥久について入ると、

「それはお前が気づいてないだけだ。

 男ってのは、決まった相手が居ても、いい女が居ると、ちょっとちょっかいかけてみようかなとか思うもんだ」
と言い出した。

「ええっ?
 課長もですかっ?」

 もう信じられませんっ。
 帰りますっ、と出て行こうとすると、

「一般論だろ」
と言って腕をつかまれた。

「じゃあ、お前らは違うのか。
 この間、電車で後ろに乗ってた女どもは、ずーっと男の話してたぞ。

 他に話すことはないのかと思って、イライラしながら聞いていた」
と言う遥久に、

 ……いや、聞かなきゃいいんじゃないですかね? と思う。