わたし、結婚するんですか?

 





 食事を終えたあと、また遥久に手を引かれ、洸は近くのマンションに来ていた。

 どうも遥久のマンションらしい。

 そう新しくはないが、どっしり重厚な造りで、如何にも遥久が選びそうな安定感のある建物だった。

 変にチャラついていないというか。

「課長の家には行かないんじゃなかったんですか?」
と言うと、遥久は鍵を開けながら、

「いや、お前が佐野さんと話してるのを見て、なんとなく危機感を感じたから、ちょっとリードしとこうと思って、連れてきてみた」
と言う。

 だが、そこで、振り返り、
「……本当に後悔するなよ」
と脅すように言ってきた。

 怖いです、課長っ、と思っていると、
「まあ、佐野さんは、他に誰か好きな人が居るみたいだから、問題はないはずだけどな」
と言う。

「そんな話、佐野さんといつしたんですか?」
と問うと、

「見ればわかるだろ」
と遥久は素っ気なく言ってくる。