わたし、結婚するんですか?

「あのー、一応、お客様のこういうことには口出ししないことにしてるんですが」
と前置きして、一真はらしくもなく、遠慮がちに言ってきた。

「長年、というわけでもないですけど。
 カップルを見てきた私から言わせてもらうと、津田様と悠木様はとても相性の良いカップルに見えますよ。

 なにかあってもなくても」

 そのなにかあってもなくてもが気になるんですが……。

 この人には、自分には見えていない、なにかが見えている気がして。

 そこで、一真は、チラと洸の後ろを見て、

「このまま、津田様の記憶が戻らなくてもいいんじゃないんですか?
 
 今、津田様が悠木様をお好きなら、それでいいと思いますよ」
と言った。

「佐野さん……」
と感謝しかけたとき、一真は笑って、

「長い人生、ときには騙されてみるのも一興ですしね」
と付け加えてきた。

 ええっ!? と声を上げると、また笑う。