わたし、結婚するんですか?

 




 結局、外で食べることになり、仕事が終わったあと、洸は大型ショッピングモールの中の書店で遥久を待っていた。

 なにか出てないかなーとぼんやり平積みしてある新刊を眺めていると、
「こんばんは」
と響きのいい声がした。

 振り向くと、目の覚めるような男前が立っている。

「あ、佐野さん、こんばんは。
 おうち、この辺りなんですか?」

 式場からはちょっと離れているのでそう訊くと、
「いえ、友人の家に行く途中なんですよ」
とまごうことなき営業スマイルで言ってくる。

 まあ、職場外とは言え、客だからなーと少し寂しく思ってしまった。

 なにかこう、親しみやすい従業員だからだ。

 所詮、私も課長もお客様だから、お友だちにはなれないんだろうな、と思ったあとで、

 友人って、女の人かな?
 と思う。

 横を通ったOLらしき人が一真を振り返って見ていて、ほんとモテるな、この人、と思ったからだ。