「そうだ。
 おにいちゃん、此処でちょっと電話、かけさせて」
と言うと、

「……社長室を電話ボックス代わりに使うなよ」
と章浩は言ってくるが。

「ごめん。
 ちょっと誰にも聞かれたくない電話なの。

 静かにかけるから。
 ごめんね」
と言って、部屋の隅へと行く。

 さっき、スマホをチェックしてみたら、登録した覚えのない店の名前ようなものが登録してあったのだ。

 その番号に自分が発信した痕跡もある。

 なにか気になる、と思いなから、かけてみると、すぐに相手は出た。

 やはり、結婚式場のようだった。

「はい、海の見える結婚式場、イグレシア、佐野でございます」
というよく通る男の声がした。

 やはり、結婚式場のようだ。

「あの、私、津田洸と申しますが」
と言っただけで、すぐに、

「津田様ですね。
 ありがとうございます」
と返ってきた。