そう言ったあとで、章浩は顔を上げる。

「お前は、大学の推薦枠だ。
 俺は関係ない。

 親までしか書いてないだろ、履歴書も。
 名前も違うし、わかるか。

 バレるとしたら、一部で無駄に有名な、お前の母親からくらいかな」
とその母親の甥は言ってくる。

「ところで、なんの用だ、小遣いか」

「いや……もう小学生じゃないんで」

 少し歳の離れたこの従兄は、遊びに来るたび、駄菓子とかミニカーとか銃とか買ってくれていた。

 ……すべて駄菓子屋にあったものとはいえ、女子に与えるものとして、どうだろうかな。

 今になって、そう思うが、当時はなにも違和感を覚えなかった。

「ねえ、おにーちゃん、今、大丈夫?」

「なんだ。
 くだらない話か」

 歳に似合わぬ重厚な椅子に背を預け、こちらを見る章浩に、
「まあ、聞きようによっては」
と言う。

「あのさ、私がおにいちゃんと従兄妹だってことで、私と結婚したいと思う人って、居ると思う?」

 章浩は、突然、なにを言い出した、という顔をする。