わたし、結婚するんですか?

「すみません。
 ちょっと配り物回収行ってきます」
とおばさまに言うと、笑顔で、はい、ごゆっくりーと言われた。

 いやいや、別にサボりに行くわけじゃないんですよ。

 いや、本当に……と思いながら、外に出ると、葉山も帰るのか、ついてきた。

 だが、エレベーターのところで、じゃ、と別れようとすると、いきなり腕をつかまれる。

「そうだ、津田。
 お前のお袋さん、いつ、帰ってくるんだよ」

「は? お母さん?」
と訊き返すと、葉山は、

「上海から帰ってきたら、俺を紹介してくれるって言っただろ?」
と言い出した。

「ヘ? いつ?」

「この間の同期会のとき!」
と言ったあとで、葉山は腕をつかんだまま、俯いて、溜息をついてみせる。

「やっぱりなー。
 あれからなんにも言わないから、忘れてんじゃないかと思ったよ。

 酔っ払いに約束取り付けても意味ねえなー」

 洸が、ごめんごめん、と謝り、
「いやー、それが今、ちょっと部分的に記憶喪失でさ」

 そのせいかも、とに苦笑いして言うと、案の定、葉山は、
「なんだその、お前に都合のいい話は」
と言ってくる。