「これ以上俺を怒らせないでください」
男性たちはすくっと立つ平さんを見て、青ざめている。
「お帰りください」
それが合図だった。
男性たちは鞄を担ぎ、悪態を吐きながら去っていった。
そんな男性たちをもう気にすることもなく、
「藍ちゃん……」
平さんは、地面にだらしなくしゃがみこんでいたあたしの身体を抱き起こした。
口の中が切れたらしく、鉄の味がする。
そして、頰も擦り切れたようで痛い。
髪はぐしゃぐしゃで、服はドロドロ。
だけど、胸はきゅんきゅん甘い音を立てる。
あたしの斜め上には、平さんの優しくも切なげな顔があって、
「ごめんね……」
消えてしまいそうな声で謝る。



