平さんの『仕事部屋』は、luceから徒歩五分ほどのところにあった。
一見普通のワンルームマンションだが、その部屋に入ったあたしは、
「わぁ……」
思わず声をあげていた。
広々とした部屋には、たくさんのスタンドが置かれていて、色とりどりの服がかかっている。
定番のものから最新の流行を取り入れたものまで。
思わずその服たちに見入ってしまった。
「わぁ……この刺繍のブラウス、可愛い」
「このジャケットは男らしいですね」
「ストールだけでもこんなにもある!」
まるで、ショッピングするかのように次々に服を手にするあたしに、
「藍ちゃん、今日は時間がないんだ」
平さんは優しく告げて、あたしの手から服を取り上げた。



