シンデレラの魔法は解けない






「藍ちゃん、次は俺の仕事部屋に行くよ?」




平さんの声で我に返った。

平さんはちらりと腕時計を見る。

その時計は個性的でスタイリッシュなものだったが……高級ブランドのロゴが一瞬見えた。

そんな高いものを、さらりと付けてしまう平さんは、やっぱり素敵男性だ。





「意外と時間が押してるね。

急がなきゃ」




そして、おもむろにあたしの手を握る平さん。

ふわっと甘い香水の香りも手伝い、頭が麻痺してしまいそうだった。

世の中に、こんなにスマートで、こんなにオトナで、こんなに素敵な男性がいるなんて。

平さんの一挙一動に、あたしは翻弄されている。