あたしは平さんを見上げる。 髪は乱れていないし、服もよれていない。 情事をしていたことなんて嘘のようだ。 だけど平さんがぬかりないだけで、密室のことは分からない。 この場に及んでも、そんなことを考えてしまった。 そんなあたしを、 「藍ちゃん、何してるの?」 平さんが現実に突き戻す。 あたしを呼ぶのはいつもの平さんの声なのに、今日はどこか冷たくて棘があった。 「ごっ……ごめんなさい」 あたしは平さんに謝る。 「コンビニに行って、それから……」