あたしの斜め後ろから、刺すような視線を感じる。 慌てて振り向くが、人影はない。 ただ、不自然に街路樹が音を立てた。 やっぱり誰かがいるんだ。 あたしをつけているのだ。 あたしは馬鹿だ。 平さんがあれだけ心配してくれたのに、一人で部屋を飛び出していた。 そして、あたしを助けてくれるであろう平さんは、マンションの中でお取り込み中だ。 ……そう、お取り込み中。 四十五分も時間があれば、余裕でそれも出来るだろう。 そんな平さんが、あたしを助けてくれるはずもない。