シンデレラの魔法は解けない





何を言っているのだろう、この男性だって元ヤンだ。

いや、三十代にして元ヤンではなく、ヤンキーなのかもしれない。





複雑な気持ちのあたしに、



「そうかもしれねぇな」



彼は告げる。




「平は、地元ではちょっと有名なワルだった。

みんながあいつにひれ伏すような生活を送っていたから、東京で頭を下げて生きるのに疲れてるんだろうな」





そうなんだ。

そんなにワルだったんだ。

だけど、そんなことを聞いても平さんを嫌いになんてならなくて。

むしろ、今は大人で紳士であり続けている平さんを尊敬する。

そんな平さんの安らげる場所になりたいのに……

平さんは、あたしの前でもいい人のままだ。

おまけに、家事まで全部こなしてくれる。