「南々瀬、」
「南々瀬ちゃん? 相手が、かけてきてるのかも」
通話を開始したいつみが、スピーカーにして「はい」と告げる。
そうすれば、電話の向こうから聞こえてきたのは……
『いつみ先輩、すみません』
今俺らが探しているはずの、南々瀬の声。
申し訳なさそうなそれは、どう聞いても追い詰められているようには聞こえなくて。
「お前、今どこにいるんだ」
冷静に聞くいつみに、「どこだろう」と小さくつぶやいてから、近くにあったであろう看板を読み上げる。
……どう考えても望んで行ったようには、聞こえねーけど。
『朝、家を出たところで、女の子たちに絡まれて……
すぐにピンときたので、大和とみさとを巻き込まないように、先行って欲しいって連絡したんです。そしたら、車で完全に攫われたんですけど、』
「………」
『正直に、話しました。
納得してもらえるまで。……カードは返してもらって、わたしも無事です』
その言葉に、全員がふっと息をつく。
知らねー間に、肩に力が入っていたのは俺だけじゃなかったらしい。とにかく、無事ならそれに越したことはない。
「何もされてないか?」
『はい、大丈夫です。
すみません、ひとまずそっち、戻ります』
「そこからだと、遠いだろ。
こっちで車出すから、待っとけ」