「……来てない?」



「南々瀬ちゃん。

……今日、まだ学校に来てないのよ」



「、」



いつみの表情が、ほんのわずかに変わる。

視線で時計を追って、そのあとパソコンを操作しながら「それでどうした」と先を急かすように言った。



「木崎くんと葛城さんがいつも一緒に来る時、彼女のマンションの前まで行くんだけど。

直前になって『今日はロイヤル部に用事があって先に行ってる』って連絡があったらしいから、一緒には来てないみたいなのよ」



「なんで、そんな連絡……

今日あの子は、ここに来ないのよ」



「違うの。それがね。

……教養科の2年の子も数人、来てないの」




はっと、弾けるように何かが繋がる。

いつみが舌打ちして、「あいつのカード持ってるヤツ外部だ」と低く口にした。外部、ということはつまり、学校の外。



俺らのカードにはGPSがついているが、学校の外では電波を遮断するように作られてある。

万が一ここのシステムが誰かにハッキングされても、学校外にまで影響しないように。



「椛、お前すぐこっちもどってこい。

ルアはできる限りの情報を追ってくれ、ルノもそこで待機してろ」



知らぬ間に夕が椛に電話をつないでいて、電話の向こうにいつみが言葉を投げる。

いくら情報を追うって言ったって、初っ端の行き先がわかんねーなら、何の意味もねーけど。



「いくみさん、何か手掛かりは、」



「残念ながら何も」



そう答えるいくみさんの横で、スマホを操作したいつみが耳に当てる。

どうやらあいつに掛けたそれは、残念ながら繋がらないらしい。