「海とか、いいじゃないですか。
別荘のプライベートビーチでもいいですし、ホテルのスイートフロアでも。ホテルのナイトプールであれば貸し切れますし」
「……さすが八王子の息子」
「ふふ。使えるものは使いますよ。
南々先輩が楽しんでくれそうなら、なおさら」
「お前あいつに甘いな」
「莉央さんも、ですよね。
椛先輩もいるのであれば、遠出して泊まるのはすこし厳しいかもしれないので、全員で話さないと決められませんけど」
「つーかその前に、あいつの親の許可いるだろ」
女子高生だしな。
女同士ならまだしも、男ばっかなのにしれっと泊まりの許可なんて出せないだろ。……誰も手出ししねーのは、わかってるけど。
「あ、嫌って言わないんですね」
「……は?」
「南々先輩と夏休みを一緒に過ごすことに、ですよ。
というか、ケーキを取りに行ったときに何があったんですか?」
「なんもねーよ」
「何もなかったら、莉央さんがあんなに南々先輩と仲良くなることなんてないと思いますけど」
散々、椛とあのオネエに質問攻めにされたそれ。
何を言われたって、あの日の会話をほかのやつに話したりなんかしねーけど。……あいつも同じように聞かれて、「内緒です」って言ってたし。
何かあったわけじゃない。
ただ俺が。……信じてみようと、思っただけで。



