その後、約束通り昼休みに、みさとはいくつかロイヤル部について教えてくれた。

『王』、『女王』、『王子』に『騎士』と『馬』。馬が王宮関連……?というか、王宮ってなんだそもそも、という疑問はさておき、問題は姫探しだ。



どうやら今年『ロイヤル部』と改名された生徒会執行部は、4月からずっと姫を探しているらしい。

ただ、姫という文字のつく名字ならなんでもいい、というわけではないようで。



「この学校だけでも結構人数いるんだけど、姫ってつく子はほとんどいないし……

知り合いでも他校でもいいから、って、とにかくずっと『姫』のつく子を探してたの」



「……へえ」



「ネットでホームページ立ち上げてまでやるぐらいだから、みんなすごい興味持ってて……

最近は音沙汰なかったから、てっきり終わったと思ってたんだけど、」



終わってなかったんだねー、と。

自販機で買った甘いカフェオレに、口をつけるみさと。ネットを使ってやっていたなら、確かに結構大掛かりだ。



目的はなんだったの?と聞けば、みさとは首を横に振った。

……それがわからないから、みんな興味を示していたのか。




「呼び出された人たちは結局何もなかったみたいだから、南々瀬も安心して良いと思うよ。

でもロイヤル部のこと知らないってなると命取りになりそうだから、みんなの顔くらいは覚えてきてね」



「……ええ、そうするわ」



転校してきただけなのに、余計なことに巻き込まれるなんてたまったものじゃない。

教えてくれたみさとにお礼を言って、帰る前に「なんかあったら言えよ」ってなんだかんだ心配してくれていた大和に、うなずいて。



「……ここ?」



放課後、わたしはC棟に訪れていた。

学園内でいちばん高さのある棟。棟っていうかもはや塔。……って言っても、なんか、閉まってるんだけど。



部屋どころか棟が丸々閉まっているし、入り口の扉は真っ黒で『Royal Room』なんていう金の箔押しがされている。

……この学校、ぜったい経費の使い道まちがってるでしょ。



両開きの扉の右にはセキュリティシステムと、その下にはインターフォン。

おそらくこれを押せば良いんだろうけど、なんとなく予想していたのと違いすぎて躊躇うというか。