「えっ、もう昼休み終わり……!?」



「あ、ほんとだ。

ふふ、結構話し込んじゃってたみたいね」



「あああっ、もっと話したかったのに……!

じゃあっ、またね南々瀬!あとで週末の連絡する!」



昼休み終了のチャイムが鳴り響くと、あわてて荷物を纏めて行ってしまうみさと。

わたしはこの後C棟に行くから、特に急ぐこともない。持ってきていたバッグの中に空になったお弁当箱を片付けると、席を立った。



バラ園を出て、C棟に続く廊下を歩く。

各棟は離れているけれど、雨の日にも傘を持たずに移動できるように、各棟の入り口までは屋根が続いてる。



空の見えるバラ園にいたときから思っていたけれど、今日は雨で外が薄暗い。

帰ったら洗濯物を干そうと思っていたのに、外干しはできなさそうだ。……まだ梅雨だから、仕方ないんだろうけど。



こうもジメジメとした日が続くと、なんだか浮かない気分になる。




ルノくんに美味しい紅茶でも淹れてもらおう、と思いながら。

C棟の黒い扉の前で、財布を取り出そうとバッグを漁る。……あれ、財布ここに入れなかったっけ。



「南々瀬」



「っ、わ、びっくりした」



「びっくりした、じゃねーよ。

何してんだよ、こんなところで」



聞こえた声にばっと振り返れば、眠そうに欠伸しながら近づいてくるのは、いつもはC棟にいるはずの莉央。

どこかに行ってたの?と問えば、スポーツ科が主に使うジムに行っていたらしい。……特進科じゃなくてスポーツ科に入ればよかったのに。



「あ、あった」



ようやく見つけた財布。

いちばん大きいところじゃなくて、深いポケットに入っていたらしい。