「……あの人のことどう思って、入部するって決めたんだよ」
言われた声に、ちょっとだけ素を感じて。
いつみ先輩のことをどれだけ慕っているのかは、言われなくてもわかる。そしてそれはまちがいなく、彼を支える理由のひとつだ。
「かっこいいな、と思って」
「……あ?」
「そういう意味じゃなくて。もちろん外面としてもかっこいいとは思うけれど……
『王様』の名前に不釣り合いにならない全部が、かっこいいなと思ったの」
いつみ先輩に対してつけられた、王様の称号。
それに劣らない彼の全部と、称号にふさわしいだけの彼の全部。その釣り合いがとてもかっこよく見えた。
「不思議とすんなり、思ったのよ。
ああこの人はこの学園の王様なんだ、って」
彼が2年以上築いてきたものが、自然と見えた気がしたから。
だから強制入部だとは言われていたものの、断るという選択肢は、比較的わたしの中にはなかったように思う。躊躇はしていたけれど。
「……偽物では、なさそーだな」
「……え?」
「なんでもねーよ。
姫探しの、姫が。……本当はお前じゃなかったら、どうする気なんだろうな」
「さあ? それは知らないけど。
わたしは別に構わないわよ?もうすでにたくさんいい思いさせてもらっちゃってるから、それは申し訳ないと思うけど。……離れるのは苦手じゃないの」
「へえ」
「いつまでも、ずるずるとそばにいるよりも。
いっそ引き裂かれた方が、未練を残さなくて済むじゃない?」