知らないことは罪だと思う。何においても。

けれど知ることが得策だとは、誰も思っていない。だからこそストレートに尋ねることはできないし、聞いたからって答えてくれるわけじゃない。



曖昧だ、いつだって。

知らない方が得か知る方が得かなんて、知る以外にたしかめる術はない。でもそこに到達するには、まだ日が浅すぎる。



「万が一のことが起きた時。

何もかも自分だけで責任取れんのかよ」



その言い方をすれば、夕さんが断れないのを知っているから。簡単には決断できないのを、わかっているから。

あえて言い放った莉央に、ため息をつく。



「……、わかった。

なら、この件はもうすこし保留にするわ」



いくらこの人でも、

"主人"を自ら危険な目に遭わせることはしない。



ある意味手っ取り早い手段だなと思いながら、テーブルの上に置かれたリモコンを手に取る。

テレビをつければ朝のバラエティ番組がやっている最中だった。




「また『NANA』じゃねえの。

主演映画はじまるから、その宣伝か」



ゲストは今人気のアイドル、NANA。

中高生メンバーで構成された人気のアイドルグループのひとりで、演技も上手いと評判らしい。次に来る俳優ランキングでも1位とかなんとか。



「姫、アイドルとか興味ねえの?」



NANAはいま中3で。進学先の有力候補は、芸能科がある王学だと言われている。

人気アイドルが入るとなれば、来年のここの倍率もすげえんだろうな。



「興味がない、というより、

あんまり家でもテレビとか見なくて……」



「へえ。ちなみに『NANA』どう思う?」



「かっこいい、と思うけど……?

みさと……普通科の子なんだけど、その子がファンでCDとか持ってるの。歌は好きよ」