その返事を聞いた莉央の表情を見て笑ってしまいそうになったけど、堪えて「んじゃあ莉央が食い終わったら行こうな」と声をかける。

もう既に彼女の定位置と化している、いっちゃんの隣に座る我らが姫。



「そういえば、わたし生徒会の仕事とかやったことないんだけど……

そもそも、わたしのここでの立ち位置って、」



姫、なんて役職は、当然ながら生徒会にはない。

会長、副会長がふたり、書記に会計に会計補佐、と俺らの役職も成り立っている。そのため、強いて彼女に役職はないわけで。



「別にお前は仕事しなくてもいいぞ。

授業に出たいなら出ればいいし、ただここには名前を置いているだけでいい」



「……さすがに申し訳ないので手伝わせてください」



「って、言われてもね。さすがに"姫"に庶務なんて仕事もさせられないじゃない?

そうねえ……、ああ、会長代理とかどう?」



夕さんの突然の発言に、ぽかんとする彼女。

言われた役職について驚いているのか、それとも意味を理解できていないのか。




「いつみ、稀にC棟にいないのよね。

教師に呼び出されたり、あとは個人的な用事で」



「は、あ……」



「だからその時の会長代理。

万が一、なんてあたしたちがいる以上起こりはしないけれど、最終的な判断を下す指揮権を代わりに持っていてくれれば、」



「夕」



良い提案だとでも言いたげに、弾んだ声で話す夕さん。

それを一言で止めたのは莉央で、それを予想していたみたいに夕さんは青い海みたいな碧眼を細める。



「何か不満でもあるの? 莉央」



文句を言わせる気がないってことを、ひしひしと感じる。

でも莉央の言いたいこともわかる。彼女がこちら側の人間じゃなかった場合、何も被害がないとは言い切れない。──まだ俺らは、何も知らねえから。