それでもあなたがそんな顔を見せてくれるなら。
それも悪くないんじゃないかって、そんな単純なことばかり浮かんで。キスされるだけで、深くまで堕ちていくみたいな錯覚を起こす。
「本当は……
お前が修学旅行に行くまでに、俺のもんにしてしまおうと思ってた。……離れねえように」
「……うん」
「でも……お前の話聞いたら、安心した」
ぼんやりと暖色の明かりに照らされながら。
ぽつぽつと零して、彼はそっと手の甲でわたしの頬を撫でる。
「……わざと、二日前にして正解だったな」
「え?」
首筋にやわらかくくちびるが触れる。
何度もそのあたりに触れていたけれど、ちりっと紅いシルシをそこに残されたのは、いまがはじめてだ。
「修学旅行中に、腰痛いの嫌だろ?」
「え? ……へ?」
「明日の午後の学年集会は絶対出席だったな。
……なら、生徒会権限をフル活用して午前は遅刻していけばいい」
「え、と……?」
あれ? なんかおかしくない?
わたしさっきまで、真剣な話してたんだけど。
「お前の気が済むまで。
……今日は俺のこと、好きなようにしろよ」



