【完】こちら王宮学園ロイヤル部




もうひとりの体重を受けて軋むベッド。

冷えたシーツに沈んで、先輩をじっと見上げる。



「……やめとくか?」



……多少強引にしたって怒らないのに。

わざわざ聞いてくれる理由なんて、分かりきってる。



「……ううん」



どこまでも優しいの。

わたしのまわりの人は、みんな優しい。でもこんなにも優しくて、切なくて、愛しくて、放っておけないのはあなただけなの。



「……ぜんぶあげる」



指輪の嵌められた指に、彼の指が絡む。

はじめは触れ合っていただけのそれが、徐々に熱を共有して、体温を上げるのに比例して汗ばんでいく。




「っ……」



くちびるから漏れる声が、自分じゃないみたいに。

甘ったるく、吐息とともに抜ける。



「いつみ、せんぱ……」



「……大人げなくて、悪いな」



何もされなくて不安だった、すこし前までの自分。

だけどそこまで踏み出していいのか躊躇ったいつみ先輩は、本当に優しい人だ。



「先輩、わ、たし……」



こんなときに言うことじゃない。

だけど想いをすべて重ね合うなら、どうしてもいま伝えておきたいことがある。