「いつみ先輩?」
羽根でも掬うような優しさで、わたしを抱き上げる。
そのまますぐうしろのベッドにおろされて、体重がかかったことでキシリとスプリングが鳴いた。
「……身体、力入ってる」
ピッと彼が紐を引くと、ベッドサイドに置かれた小型のルームランプが暖色の明かりを部屋に落とす。
わたしがランプ欲しいなあと言ってたら、ネット通販御用達のルアが教えてくれたおすすめのそれ。
ねだったら、
いつみ先輩は二つ返事で買ってくれた。
「あ、の……」
だめだ緊張してる。
ここにきて、ようやく彼がどうしてこんな時間にわたしを寝室に連れてきたのか、その理由に気づいたのに。
「、」
わたしを怖がらせないようにか、ベッドに手をついて触れるだけのキスばかりくれるいつみ先輩。
座ったまま彼のキスを何度も受けるだけで、強引に押し倒されるような雰囲気はどこにもなかった。
「……いつみ先輩」
内側で、感情が燻る。
熱くて溶けてしまいそうなのに、どこまでもわたしに優しいから、切なさにばかり胸を締め付けられる。
「……好き」
──キスが、深くなった。
ようやく凍えるような冷たさだけ広げた空間に温度がもどってきたみたいで。誰にも聞かせられないような音が、静かな寝室に響く。
冷えた部屋と冷えたシーツ。
思わず息が上がるほど熱くなった全身が、その温度差にふるりと震えて。



