「ん、終わり」
「……ありがと」
乾いた髪に、最後に櫛を通す。
彼が丁寧な手つきで乾かしてくれたおかげなのか、一度も絡むことなく梳き終えて、ドライヤーを片付ける。それから。
「歯磨きしちゃったし、もう寝る?
まだ寝るにしては少し早い時間だけど」
ちゅ、と額にキスをくれた彼を見上げて問う。
リビングと洗面所をつなぐ扉が開いてるけど、やっぱり洗面所にふたり立つと狭い。
「……いや、いい。
たまには、寝るのが早くてもいいだろ」
……そしてまためずらしい。
まだ小学生でも夜ふかししてるこんな時間にそんなこと言い出すなんて。
……いや、はやく寝てくれるならいいけど。
いつまでも彼のめちゃくちゃな睡眠時間を黙認するわけにはいかないから、寝てくれるならそれに越したことなんてないけど。
「じゃあ……寝室でゆっくりしましょうか」
わたしも早くて眠れそうにないような時間だし。
ひとまず寝室でゆっくりすればいいかと、軽く片付けをしてリビングを後にする。
ふたりで眠れるベッドがあるだけの、広い寝室。
はじめはベッドしかなかったそこの小窓には、わたしがあとでレースのカーテンを取り付けて引いた。
サイドテーブルにある小物もわたしのものだし、シンプルすぎるベッドの隅にかわいいぶたのぬいぐるみを置いたのもわたし。
ちなみにそれは莉央が友だちとUFOキャッチャーで取った景品で、ほかにあげるような女友だちがいないからとくれたものだ。
「……南々瀬」
サイドテーブルに充電ケーブルと接続したスマホを置いて、振り返る。
首をかしげたわたしの手を、そっと引いた彼は。



